左うでの夢
前作『B-2ユニット』で表現されていた、1980年代ニューウェーヴの(どこにも出口が見つけられないような)ザラついた音像から一転、やわらかく、温かいイメージが充満したアルバム。メロディも非常に豊かで愛らしく、初期の作品のなかでは、もっとも聴きやすいポップ性を帯びていると言えるだろう。このあたり、「芸術作品としての革新性と、商業音楽としての大衆性」を彼なりに考えていたのかもしれない。また、この作品の前後から坂本がたびたび取り上げることになる「アジア」というモチーフも、顔を見せ始めている。(森 朋之)